「アイテム選びに関して、私はミニもロングも、パンツもスカートも、タイトもフレアも着ます。シックな色も、鮮やかな色や柄物も。そこで大切なのは「組み合わせ」の力。コーディネイト次第で服の魅力は180度変わります。この色や柄は自分には難しいかな、と思ったとしても、組み合わせ次第で思いがけずピタッとチューニングが合って、それまでの自分とは違う新鮮な雰囲気を生み出せることもある。そんなハーモニーの妙を楽しむのもファッションの喜びですから。でももちろんその逆も然り。バランスに対して気配りがなくなった途端、どんなに高価なアイテムでも、お気に入りの服でさえも、素敵に見えなくなってしまうからです。靴の高さや形ひとつでも印象はガラッと変わるし、ヘアのまとめ方次第でも全然違うもの。一見地味に見えるセットアップもアバンギャルドなヘアに組み合わせると面白くなったりするの。私は靴を履いて全身を鏡に映して、バランスがしっくりこなければ、全部やり直します。そうやって冒険と挑戦を繰り返していれば、手持ちの服も、まだまだいくらでも新鮮に蘇らせる可能性をもっていることに気づくはずです。」

「私が毎日の服を選ぶ上で大切にしていることは、仕事の内容によって変えることはもちろんですが、仕事の現場でシャキッと引き締まって見えるか、ゆったりリラックスしているのか。そんなマインドが一番表れる装いはどれか、という基準で服を選ぶことが、毎日を機嫌よく、自分らしく過ごす秘訣です。私がおしゃれをするのは、誰のためでもない、自分のためですから。私は子供の頃から好きな服しか着ませんでした。七五三の晴れ着も拒否したし、学校の制服もネクタイやスカート丈をアレンジして。女子美術大学に入学してからは、自分がそれまでいかに服装によって縛られていたのか、逆に自由なファッションはどれほど人を解放するかということを体で感じたのを覚えています。その思いは今も変わっていません。今の時代は昔と違ってTPOをうるさく言われることもすっかり少なくなったと思いますから、みんなもっともっと"自分の気分"を大切にしてもよいのではないでしょうか。」

「先程のバランスの話にも通じますが、服を着こなす上で大事なのは縫製。それは永らくオートクチュールの現場を見てきた私だからこそ思うことかも知れません。リーズナブルな服でも、ぱっと見それらしい形に仕上げることはできるけれど、愛着をもって大切にしたい服こそ細部まで確認しているかもしれませんね。年齢を重ねて自分自身のシルエットだって崩れてくるというのに、その上に着る服のシルエットまで崩れていたら大変。きちんと作られた服なら、服が体を支えてくれて、いつもしゃきっと着こなせますよ。」

「私は季節によってファッションのコンセプトを変えています。夏なら、私は泳いだり旅をしたりとアクティブに過ごすから、遊び心いっぱいのアイテムも思いっきり楽しみます。昼と夜でガラッと雰囲気を変えたりね。秋は一変して、「重み」を楽しむ季節。質感を重ねたり、雰囲気のある色を取り入れたり。そして冬。この時期は多少お金がかかったとしても、オーソドックスで高品質な、長く着られるものを選びます。変化をつけるならアクセサリーや小物で。そして春は、一番楽しい季節。やさしくきれいな色や、裾が揺れたりひらりとたなびいたりする質感もいいですよね。こんなふうに季節に応じてファッションも気分もガラリと変えられるのは、四季折々の豊かな表情のある日本に暮らしているお陰ですね。美しい日本に暮らしている喜びは海外での生活でつくづく感じたものです。日本に暮らすことをもっと謳歌しましょう！」